誰も知らない彼女
亀裂とうずまく感情
アスファルトにボタボタと大粒の雪が降りだした。
12月に入り、さすがの私も寒く感じた。
つい先日までが11月だとは思えないくらいの寒さが襲っていた。
誕生日に叔母さんからもらった赤いチェックのマフラーを首に巻いて登校すると、昇降口で偶然由良の姿を見つけた。
「由良、おはよう」
私がいきなり声をかけるとは思っていなかったのか、肩をびくっと震わせて目を丸くする由良。
しかし、私の顔を見て表情がやわらいだ。
「……よかった、抹里か。おはよう」
一瞬だけ見えた由良の表情はいったいなんだったんだろう。
疑問に思ったと同時に、由良がいつも見せる笑顔で私にペタッとくっついた。
どうしたんだろう。
ファミレスに来たとき以前の由良はどこにいったのか。
休むと言っていたけど、全然休んでいる感じではなかった。
変わったのはそれだけではなかった。
この季節になっても、まだコートを着ていない。
由良は寒がりだから、寒くなったらすぐにコートを着て外に出るのに、ブレザーの上にはなにも羽織っていない。
しかもしもやけになった状態の手に手袋をはめていないし、赤くなった首にもマフラーの姿がまったく見えない。
さすがにおかしいと思い、鼻を赤くして笑う由良の顔をおそるおそる覗き込む。
「由良、最近おかしくない?」