誰も知らない彼女

亀裂とうずまく感情


アスファルトにボタボタと大粒の雪が降りだした。


12月に入り、さすがの私も寒く感じた。


つい先日までが11月だとは思えないくらいの寒さが襲っていた。


誕生日に叔母さんからもらった赤いチェックのマフラーを首に巻いて登校すると、昇降口で偶然由良の姿を見つけた。


「由良、おはよう」


私がいきなり声をかけるとは思っていなかったのか、肩をびくっと震わせて目を丸くする由良。


しかし、私の顔を見て表情がやわらいだ。


「……よかった、抹里か。おはよう」


一瞬だけ見えた由良の表情はいったいなんだったんだろう。


疑問に思ったと同時に、由良がいつも見せる笑顔で私にペタッとくっついた。


どうしたんだろう。


ファミレスに来たとき以前の由良はどこにいったのか。


休むと言っていたけど、全然休んでいる感じではなかった。


変わったのはそれだけではなかった。


この季節になっても、まだコートを着ていない。


由良は寒がりだから、寒くなったらすぐにコートを着て外に出るのに、ブレザーの上にはなにも羽織っていない。


しかもしもやけになった状態の手に手袋をはめていないし、赤くなった首にもマフラーの姿がまったく見えない。


さすがにおかしいと思い、鼻を赤くして笑う由良の顔をおそるおそる覗き込む。


「由良、最近おかしくない?」
< 173 / 404 >

この作品をシェア

pagetop