誰も知らない彼女
若葉も、まさかふたりがケンカするとは思っていなかったらしく、顔を青白くして数歩ほどあとずさった。
由良と秋帆を止められないかと考えていると、やっとで体育担当の先生が体育館にやってきた。
だが、私以外の全員はそのことにまったく気づいていない。
「みんな、遅くなってごめんね! 先生たちの会議が長引いちゃって。さぁ、もう時間がなくなるから授業を……って、えぇ⁉︎」
ここにいる全員が先生に気づく前に、先生が館内の騒ぎに気づいた。
首からさげたホイッスルを思いっきり鳴らし、人波をかきわけて由良と秋帆を止めに入った。
「な、なにしてるの⁉︎ 八戸さんに高島さん、今は授業中なのよ! ケンカはやめなさい!」
先生がふたりの肩をグッと掴んでケンカを止めようとするが、ふたりにはまったく効果がなかった。
ふたりはお互いの悪口を言い合いながら、髪を引っ張って唾を吐き合っていた。
それに鬼を思わせる怖い形相でお互いを睨んでいたので、止められる余地はない。
自分が一生懸命ケンカを止めてもふたりのケンカが止められないことを察知したのか、先生は深いため息をついてあきらめたような表情を浮かべた。
そして、先生がひとり離れたところにいる私に駆け寄った。
「榎本さん、腕が血だらけじゃないの! 今すぐ保健室で手当てしないと!」
「い、いや、大丈夫です。こんなのたいした傷ではないので……」
「大丈夫じゃないでしょ! 授業のことはいいから早く保健室に行きなさい!」
由良と秋帆を止められないかと考えていると、やっとで体育担当の先生が体育館にやってきた。
だが、私以外の全員はそのことにまったく気づいていない。
「みんな、遅くなってごめんね! 先生たちの会議が長引いちゃって。さぁ、もう時間がなくなるから授業を……って、えぇ⁉︎」
ここにいる全員が先生に気づく前に、先生が館内の騒ぎに気づいた。
首からさげたホイッスルを思いっきり鳴らし、人波をかきわけて由良と秋帆を止めに入った。
「な、なにしてるの⁉︎ 八戸さんに高島さん、今は授業中なのよ! ケンカはやめなさい!」
先生がふたりの肩をグッと掴んでケンカを止めようとするが、ふたりにはまったく効果がなかった。
ふたりはお互いの悪口を言い合いながら、髪を引っ張って唾を吐き合っていた。
それに鬼を思わせる怖い形相でお互いを睨んでいたので、止められる余地はない。
自分が一生懸命ケンカを止めてもふたりのケンカが止められないことを察知したのか、先生は深いため息をついてあきらめたような表情を浮かべた。
そして、先生がひとり離れたところにいる私に駆け寄った。
「榎本さん、腕が血だらけじゃないの! 今すぐ保健室で手当てしないと!」
「い、いや、大丈夫です。こんなのたいした傷ではないので……」
「大丈夫じゃないでしょ! 授業のことはいいから早く保健室に行きなさい!」