誰も知らない彼女
絶対にふたりは自殺なんてしない。


合コンで出会ったとき、私は野々村さんと畠さんの様子を見ていた。


もちろん磐波さんのことも見ていたけど、どこか目立つ雰囲気のふたりに興味がかたむいていた。


はじめて会ったときから野々村さんは明るくてとても積極的な人だった。


小さなことでグズグズと悩んだりはしない感じだった。


いきなり近づいてきたから最初は避けてたけど、誰にでも気さくに話しかける野々村さんが羨ましかった。


畠さんは野々村さんとは違って、いつも笑顔というわけでなく、表情に乏しくどちらかといえば無愛想な人だった。


でも、私が自己紹介をしたときには笑顔を向けてくれたし、なにかを伝えるときは誰かにわかるように伝えていた。


決して心のない人ではない。


そんなふたりが同じときに死ぬのはどう考えてもおかしい。


自殺ではない。ふたりの死は他殺だ。


ダイイングメッセージなどの手がかりはなくても、私はきっぱりと断言できる。


だから、ふたりの死はそれほどショックなのだ。


右手にグッと力を入れて熱を帯びた下唇を噛みしめていると、磐波さんが私の顔を見てさびしそうに微笑んだ。


「俺も正直、ひどいって思うよ。あいつらが俺らに黙って死ぬわけがないのに、なにも言わずに死ぬなんて、って。もう……信じられないもんな」
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