誰も知らない彼女
いくらポジティブな言葉をかけたって、まったく変わらないこともある。


だからといって、豹変する必要はないと思う。


このグループのメンバーだった由良がどん底まで転落したのは、まさに自業自得だ。


由良と性格の似た秋帆もここで同じように転落していくのだろうかと内心ヒヤヒヤしていた。


グループのリーダー格の秋帆までもが嫌がらせのターゲットになると、さすがにこのクラスも崩壊していくかもしれない。


ざわつく心臓をおさえている私をスルーして、しばらく黙っていた秋帆がゆっくりと口を開く。


「……そうよね。いつまでも嫌なこと考えてちゃダメよね。そんなんじゃ示しがつかないわ、私は変わらないんだっていうことが」


最後のひとことを言ったあと、秋帆はブンブンと首を左右に振って自分の両頬を両手で思いっきりパンパンと叩いた。


自分の両頬を叩いたことで今まで考えていたことが吹き飛ばされたのか、頬が赤くなっていくのもおかまいなしに微笑みはじめる。


「私は絶対違うんだから! あんなブスと性格は似ていてもそんな程度で落ちぶれはしないわよ! 簡単なことでは変わんない、それが私、高島秋帆なんだから!」


希望に満ちた眼差しを私たちに向ける秋帆だが、私の心は不安に満ちていた。


もしかしたら秋帆も由良と同じように落ちぶれてしまうのではないかと。


由良も秋帆と同じようなことを言って、おかしくなったから。


そんなことを考えながら、私は盛り上がるクラスメイトたちをじっと見つめていた。
< 212 / 404 >

この作品をシェア

pagetop