誰も知らない彼女
今の季節にアイスは合わないけど、なぜだかアイスが食べたくなったのだ。


コーンの上に乗せられたチョコミントのアイスを少しずつなめる。


それと同時に、アスファルトに落ちていた枯れ葉がこすれた音がして、私の目の前で音を奏でる。


どこかさみしげで、もの足りない感じ。


まるで今の私を映しているかのようだ。


励ましているのかもしれないけど、それにしては悲しいメロディーだった。


そばに誰もおらず、ひとりでいれば、私は暗い性格なのだと心を突き刺してくる、さみしげな雰囲気。


この季節にアイスを食べるのもどうかと思うけど、ひとりじゃさみしい。


今は磐波さんと顔を合わせられない気分。


なのに、今の私は悲しみにひたってひとりでベンチに座っている。


おかしいよね、ひとりでいてさみしいなんて。


こんな気持ちになるなら、私も学校に残って秋帆たちと一緒にいればよかったかも。


私って、なんてバカなんだろう。


じわりと目に涙が浮かんだそのとき。


「……あれ? 抹里?」


頭上からそんな声が降ってきて、はっとして顔をあげる。


聞き覚えのある低い声が誰のものであるかを理解していながらも、目を皿にする。


視界に声の主の姿らしき人物が映った瞬間、思わず声を大きくさせた。


「な、なんで……⁉︎」


私の目の前に映っているのは、予想もしていない人物だったのだ。
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