誰も知らない彼女
味だけでなく感触までもがマヒしたみたいに、口の中に入っているのがなにかわからない状態だった。


ミントの葉がなんの味もしないのはおかしな話だけど、チョコミントアイスは味がするものだろうと思い、ひとくちぶんのアイスを口に運ぶ。


やはりなんの味もしない。


ミントアイスの中に入ってる細かいチョコがまるで砂のような感じ。


ミントよりも確実に味はするはずなのに、チョコまでもが無味だ。


昔からこの味が好きで食べていたアイスが、急に味を消してしまうなんておかしい。


驚きに支配されてなにも言えない私に、悠くんが呆れとも同情ともとれるため息を吐きだした。


「はぁ、抹里って本当に昔から嘘つけないタイプだよな。言葉ではそう言ってても、表情でわかるし。わかりやすい」


わかりやすいタイプ。


一緒に遊んでいたころに悠くんによく言われていた言葉。


そっか。


昔一緒に遊んでいた悠くんには、私の表情作りはバレバレだったんだね。


さっきまで焦ってか自分がどこかに吹き飛んだみたいに、アイスを少しずつなめながら素直に話しはじめた。


「私が緊張してるから頬を叩いたと思ってる?」


「いや、全然思ってない」


「だったら、別の理由で頬を叩いたと思ってる?」


「……あぁ」


やっぱりわかっていた。


再会したときから悠くんは私の表情に異変を感じていた。
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