誰も知らない彼女
そう思い、深いため息をつく。


私が吐いたため息はあきらめなどのマイナスなものではなく、最初からこうなることをわかっていた理解のため息だった。


「じつは私、ちょっと悩んでることがあって」


「悩み? 悩みなら聞くぞ」


「ありがとう……」


私が悩みを抱えていることを最初から知っていたみたいに、心配そうな顔で私の顔を覗き込む悠くん。


優しいな。


自分のことでもないのに聞いてくれるなんて。


自分の情けなさが心にグサッと刺さるのを感じながら言葉を続ける。


「私ね、今気になってる人がいるの。でも、気になってると思ってからは異性だって意識してるせいか、目を合わせるのがなんか恥ずかしくなって……。今日も学校で会ったけど、全然話せなかったの」


こんなことを悠くんにぶつけても仕方ないと思う。


だけど、今ここにいる相手は悠くんしかいない。


心を少しでもスッキリするには悠くんに話さないといけない。


たとえどんな答えを返してきても、私は決して後悔しない。


だって、悠くんだもん。


昔一緒に遊んだいとこを信頼しないわけがない。


目をギュッと閉じてそんなことを考えていると、隣でキュッという音がした。


すぐに目を開けて隣を見た瞬間、悠くんが私の隣に座っていて、じっとこちらを見ていたことに気づいた。


そして、私の頬をギューッとつねる。
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