誰も知らない彼女
「うーん。他の友達にも聞いてみたんだけど、みんな用事があるって言ってたからね。八戸さんや高島さんも用事があるかもしれないし」


そうか、誘える友達がいないのか。


仮に若葉が合コンに誘っても、由良と秋帆がすぐに断る様子は目に見えている。


秋帆は付き合っている人がいると言っていたし、由良は昨日電話で好きな人ができたと言っていたし。


どんな理由があるにせよ、ふたりは若葉の誘いを断るだろう。


ネネとえるも絶対に断るよね。


そうだとしたら、若葉が誘える相手は私だけしかいないっていうこと?


私は若葉の誘いを断る理由があるわけではないし、土曜日にとくになにかする予定はない。


うーん、とうなって考えていると、若葉が深々と頭を下げた。


「お願い。このことを頼めるのは榎本さんしかいないの。いてくれるだけでいいから、合コンに参加してくれないかな」


めずらしい。


おとなしくて穏やかな雰囲気のある若葉が深々と頭を下げるなんて、めったにない。


若葉の友人、いやクラスメイト全員には決して見せない行動だ。


若葉のこんな行動を見たのは、たぶん私がはじめてだろう。


なんて、いつまでも若葉の行動に驚いている場合じゃない。
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