誰も知らない彼女
そこにいたのは、教室にいなかった由良だった。


「由良⁉︎ なんでここだってわかったの⁉︎」


目をパチパチとしばたたかせた直後、由良が呆れた顔で私のもとにやってきた。


そして、踊り場まで来てすぐに深いため息を吐きだした。


「教室に戻ったら抹里がいないから、クラスの女子に朝丘に呼ばれたって聞いたの。もう、本当に心配したんだからね」


由良が心配しているのは手に取るようにわかる。


よく見れば、ゼェゼェと息を整えている。


そりゃあ心配するよね。


心の中で勝手に納得してしまう。


「ごめん。急に朝丘さんに呼ばれたから、由良に言えなかったんだ……」


どういう表情をすればいいのかわからなくて、とりあえず曖昧な笑顔を見せた。


由良の反応を見るのが怖くて思わず目を閉じてしまう。


だが、由良は怒ることもなく私の肩に手を優しく置いた。


それと同時にゆっくりと目を開く。


「いいよ。急だったなら言えなくて当然だもんね。てか、朝丘とどんな話したの?」


由良、話の切りかえが早い。


その早さは羨ましいくらいだ。


そう思いながらも、さっきまで若葉と話していたことを話した。


私の話を聞いた由良は飛び出るくらいに目を見開いた。
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