誰も知らない彼女
先生の姿が視界から見えなくなったところで、頭の中にある疑問が浮かんだ。


「ねぇ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


おそるおそる聞いてみるが、私の表情が怖かったのか少し体を震わせるネネ。


顔もちょっと青ざめている気がする。


慌てて表情をやわらげると、ネネがひと息吐いて胸を撫でおろしたのが見えた。


「……ふぅ。とりあえず、ここを出ようか。いつまでも学校にいたら先生たちに怒られるもんね」


そっか。


首を小さく上下に動かした直後、ネネは口角を上げて歩きはじめた。


ネネのうしろを早歩きでついていく。


廊下に出て、ローファーにはきかえて校門を出たタイミングでネネが私のほうに体を向けた。


「で、聞きたいことってなに?」


小首をかしげて髪を揺らすネネ。


冬の冷たい風が、彼女の髪に当たってすごい勢いで吹いている。


髪のせいで顔が見えなくなったけど、質問できないことはないのでさっそく質問する。


「……学校の先輩に“磐波”っていう人いる?」


その瞬間、刺さるような冷たい風が私の肌に当たり、顔をしかめる。


だけどそれと同時に風に当たった髪が痛みから守ってくれたので、それほど痛みは感じなかった。


カバンからチェックのマフラーを取りだした直後、髪を耳にかけている最中のネネが眉間にシワを寄せてポツリとつぶやいた。
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