誰も知らない彼女
いや、いくらなんでもそれはちょっと……おかしいと思う。
たとえ名字が同じでも、名前が違うと思うから。
だからネネにこう尋ねてみることにした。
「違うよね? 私が知りたいと思ってる人と、今ネネちゃんが話してる先輩のこと。その人のフルネームはさすがにわからないでしょ?」
ちょっとだけ早口になった気がする。
そこは頑張ってスルーした。
いつの間にか作った握り拳に力を込めながらネネの言葉を待つ。
すると意外にもネネの口が早く開いた。
「先輩のフルネーム? 噂で聞いたから詳しくは知らないけど……たしかあの先輩の名前って“磐波賢一”だった気がするな」
私の心の中にあったわずかな希望はネネの言葉によって一発で壊されてしまった。
違ってなんかなかった。
ネネはちゃんと磐波さんのことを話していたんだ。
その事実が私の頭に重くのしかかり、鈍器で殴られたような衝撃を与える。
「嘘だ……」
重く感じる頭を両手で支えてつぶやく。
信じられない。
周りでどんどん人が死んでいったり行方がわからなくなったりすることも信じられないけど、恋の相手が不登校になった学校の先輩だったことが一番信じられない。
「本当だよ。前に秋帆と一緒に職員室に呼ばれたときに3年生の名簿見たらちゃんと書いてあったよ。“登校拒否”って文字のが」
たとえ名字が同じでも、名前が違うと思うから。
だからネネにこう尋ねてみることにした。
「違うよね? 私が知りたいと思ってる人と、今ネネちゃんが話してる先輩のこと。その人のフルネームはさすがにわからないでしょ?」
ちょっとだけ早口になった気がする。
そこは頑張ってスルーした。
いつの間にか作った握り拳に力を込めながらネネの言葉を待つ。
すると意外にもネネの口が早く開いた。
「先輩のフルネーム? 噂で聞いたから詳しくは知らないけど……たしかあの先輩の名前って“磐波賢一”だった気がするな」
私の心の中にあったわずかな希望はネネの言葉によって一発で壊されてしまった。
違ってなんかなかった。
ネネはちゃんと磐波さんのことを話していたんだ。
その事実が私の頭に重くのしかかり、鈍器で殴られたような衝撃を与える。
「嘘だ……」
重く感じる頭を両手で支えてつぶやく。
信じられない。
周りでどんどん人が死んでいったり行方がわからなくなったりすることも信じられないけど、恋の相手が不登校になった学校の先輩だったことが一番信じられない。
「本当だよ。前に秋帆と一緒に職員室に呼ばれたときに3年生の名簿見たらちゃんと書いてあったよ。“登校拒否”って文字のが」