誰も知らない彼女
でも、命の残量が少なくないときに誰かと遊べていたら、どれだけ幸せだったことか。


他の生徒たちみたいに、命の危険を気にすることなく誰かと笑って、誰かと一緒に過ごしたかった。


なんで私は、こんな不幸な人間なんだろう。


家族からの愛情をもらわなかったわけじゃない。


他人から愛されなかったわけじゃない。


クラスメイトから羨望の眼差しを向けられる私は、思ったよりも不幸に染められた人間だ。


だけど、私は好きでこんな不幸な人間として生を受けたわけじゃないのに……。


神様は自分が思っていたよりもはるかに残酷だったらしい。


思いどおりのことにならないだけならまだいい。


自分の仲間たちを次々と不幸な目に遭わせるのはひどい。


じわりと涙が浮かんでくる。


でも、不公平な世の中を嘆いていても仕方ない。


私という人間に生まれたからには、私の人生を私らしく生きて最後までまっとうすればいい。


死に方なんて関係ない。


どっちにしたって、人間はいつか絶対死ぬから。


もうすぐ頬に落ちそうだった小粒の涙を袖でぬぐい、自室に向かう。


逃げるためではない。


謎のメッセージを送った人物と直接会って、なんで私にメッセージを送ったのかを聞くために外に出る準備をするためだ。
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