誰も知らない彼女
2対1。
構図から見ればふたりのほうが有利だが、残りのひとりは連続殺人事件を起こした殺人鬼。
まだ安心できない。
磐波さんが現れて助けようとしても、逆に幹恵に襲われる可能性も十分にある。
そうなったら私はまたひとりになり、もとどおりになるだけ。
せめてそうならないでほしい。
唇をキュッと軽く噛んでふたりの様子を見守る。
なにも言わないと決め込んだ私をチラッと見たあと、磐波さんは幹恵に言葉の攻撃をしはじめた。
「あんた、なんで朝丘若葉を名乗ってたんだ? 最初に殺した女だったからか?」
「……っ」
「あんたが最初に殺した女、俺の友達の彼女だったんだよ。あんたが殺したせいでその友達は犯人だと疑われて処分を受けたんだ。いくら正当防衛だとしてもあの女を殺しさえしなかったら、あいつの人生がめちゃくちゃになることはなかったんだよ‼︎」
「それは……あの女が私のバッグを奪って財産を奪おうとしたからよ。だから殺すしかなかったの!」
「殺す必要はなかっただろ! お前は他人よりも自分のこと優先かよ! 殺したらそいつはもう二度と帰ってこないんだぞ。わかってんのか!」
「……っ!」
目くじらを立てて怒鳴り声をあげる磐波さんに、幹恵がひるむ。
これで形勢逆転したかもしれない。
磐波さんがここまで怒るのは、自分がかばった友達を最後まで助けられなかった悔しさと友達の彼女を殺した幹恵が許せないという思いからだろう。
構図から見ればふたりのほうが有利だが、残りのひとりは連続殺人事件を起こした殺人鬼。
まだ安心できない。
磐波さんが現れて助けようとしても、逆に幹恵に襲われる可能性も十分にある。
そうなったら私はまたひとりになり、もとどおりになるだけ。
せめてそうならないでほしい。
唇をキュッと軽く噛んでふたりの様子を見守る。
なにも言わないと決め込んだ私をチラッと見たあと、磐波さんは幹恵に言葉の攻撃をしはじめた。
「あんた、なんで朝丘若葉を名乗ってたんだ? 最初に殺した女だったからか?」
「……っ」
「あんたが最初に殺した女、俺の友達の彼女だったんだよ。あんたが殺したせいでその友達は犯人だと疑われて処分を受けたんだ。いくら正当防衛だとしてもあの女を殺しさえしなかったら、あいつの人生がめちゃくちゃになることはなかったんだよ‼︎」
「それは……あの女が私のバッグを奪って財産を奪おうとしたからよ。だから殺すしかなかったの!」
「殺す必要はなかっただろ! お前は他人よりも自分のこと優先かよ! 殺したらそいつはもう二度と帰ってこないんだぞ。わかってんのか!」
「……っ!」
目くじらを立てて怒鳴り声をあげる磐波さんに、幹恵がひるむ。
これで形勢逆転したかもしれない。
磐波さんがここまで怒るのは、自分がかばった友達を最後まで助けられなかった悔しさと友達の彼女を殺した幹恵が許せないという思いからだろう。