誰も知らない彼女
たとえ誰かが私に会おうと家に来ても、私は居留守を使う。


私の心に大きな穴が開いているから。


「はぁ……はぁ……」


肩を息を整えながらモニターを睨む。


もうネネは家の前にいないでしょ。


私に怒鳴られたんだもん、いなくなって当然よね。


きっとネネは私のことを本当の意味で友達だと思ってくれていたと思うけど、私にとっては使い捨てカメラのような存在だ。


ショックだろうけど、わかってほしい。


こうなることを最初からわかっていれば、私がこんな状態になるのは目に見えているはずだから。


完全に呼吸を整えたあと、再びモニターの確認をする。


だが、私の予想を裏切るかのようにネネの姿が映っていた。


拳をなにかに向かって叩きつけているようだ。


それは決して“なにか”ではなく家のドアだろう。


ネネを家に入れさせるのはやばいかもしれない。


一刻も早くネネを追い出さなければ……!


「出てけーっ‼︎」


送話口に向かって大声で張りあげる。


なんでまだ家の前にいるの⁉︎


早く出ていってよ、お願いだから!


『抹里ちゃん、なにかあったの⁉︎ 今日はなんか様子がおかしいよ。もしかして誰かに襲われたの?』


冷静な口調で逆に私に問いかけてくるネネ。
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