誰も知らない彼女
嫌だ。


心の声をネネに聞かれたくない。


なにがなんでも、私は自分に黙ってコソコソと秘密を隠そうとする人に思いをうちあけたくない。


もう、やめてほしい。


私のことを真の友だと思っているなら、いさぎよく引きさがってよ。


そういう意味を込めて、部屋全体に響き渡るような大声で叫ぶ。


「おかしいのはネネちゃんのほうでしょ⁉︎ 私の本当の気持ちを理解してないくせにわかってるフリなんてしちゃって! もう嫌なんだよ! お願いだから私に関わらないでよ!」


『抹里ちゃん……』


さみしそうなネネの表情を見てもなお、感情が揺れ動くことはなかった。


心にもないことを言葉にするのがやめられない。


「出てってよ! あんたに用なんかないんだから! もし私が先に死んだら、あんたを一番に恨んでやるから!」


『…………』


「後悔したってもう遅いからね。あとになって『私が悪かったです』って謝っても許さない。さっさと行かないあんたが悪いんだもん」


『抹里ちゃん、私は……』


「うるさい! 早く出てってよ!」


ネネに言いわけをするひまを与えず、次々に乱暴な言葉を浴びせる。


これ以上ネネが傷つかないようにするには、こう言うことしかできないんだ。
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