誰も知らない彼女
目から熱いなにかがこぼれ落ちていくのを感じたあと、ネネから目をそらしてモニターの電源をプチッと切った。


見せたくなかった。


もう、なにも言いたくなかった。


言ったら、すべてをネネに吐きだしてしまうのではないかと思っちゃって。


手のひらで涙をぬぐい、小さいため息をつきながら椅子に座った。


これでもう、私は本当にひとりぼっちになってしまった。


いや、ひとりに戻ったと言ったほうが正しいのかもしれない。


信頼を寄せる相手なんて誰もいない。


心の底から本音を言い合えると思っている相手もいない。


いくらクラスメイトのみんなに囲まれてたって、どんなに羨ましがられたって、心の中ではほとんどひとりだった。


どんなに努力したって、私は最初から孤独だったんだ。


そう思うと涙が止まらなくなる。


必死に涙をおさえて、涙と同時に出てきた鼻水をティッシュでかもうとしたそのとき。


机の上に置いてあったスマホからバイブ音が聞こえてきて、再び体をびくっと震わせた。


同時に出てきた涙と鼻水が反射的に引っ込んだ。


スマホの画面に表示された名前を見て、出ようかどうかためらってしまう。


だって、その名前が悠くんだったから。


数日前の電話以来なにも話していないからか、妙にドキドキする。
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