誰も知らない彼女
『……どこにいると思う?』


「えっ……」


な、なんだか意味深な発言。


どこにいるかって、そんなの悠くんしか知らないから、私にクイズとして出しても答えなんてわからないよ。


だけどここは、一番スタンダードな答えを出すとしよう。


「えぇっと……大学?」


『ブッブー、残念! 今、俺がいるのはね……』


『ちょっとなんなんだよ! お前、今誰と話してるんだよ!』


あれ、大学じゃなかった……じゃなくて。


悠くんが答えを出す前に、聞き覚えのある声が聞こえてきたような気がする。


眉間にシワを寄せて首をかしげる私をスルーして、悠くんが叫んだ相手に言い返した。


『しーっ。そんなことをこんなところで叫んだら、誰か来ちゃうでしょ。いとしの抹里にもまだ場所も知らせてないんだから、静かにしてよ』


えっ……⁉︎


今、悠くんはなんて言ったの⁉︎


誰かに向かって返した言葉なんだろうけど、私にはその声がまる聞こえだった。


『……っ、お前、“いとしの”ってなんだよ! 抹里ちゃんとどんな関係なんだよ!』


まさかこの声は、磐波さん⁉︎


つまり、悠くんと磐波さんは一緒にいるってこと?


『おい、抹里ちゃん! 俺たちは今、この男の別荘の裏山に来てるんだ! 今すぐ来てほしい!』


自分たちの声がまる聞こえだと察したのか、磐波さんが私に聞こえるように声を張りあげた。
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