誰も知らない彼女
疑問に思いつつもその落ち葉を手にしたまま歩き続ける。


しかし、そこから数歩ほど進んだところでピタッと立ち止まってしまった。


ふと視線を上に向けると、木と木の間に黒色の縦長のなにかが視界に映った。


なんだろう。


こんなところに黒いものなんてあったっけ?


おそるおそるその黒いなにかに近づいていくと、思わず口を手でふさいだ。


私が見つけた黒色の縦長のものは、男ものの靴だった。


そして、その靴をはいている人が倒れてるのを見てしまったのだ。


その人は心臓を刃物で刺されたらしく、周りには血痕と思われるものが飛び散っていた。


ここではっと目を見開く。


そうか。この落ち葉に赤黒い水玉模様ができたのは、この人の血がこの落ち葉に飛んだからなんだ。


だが、驚いたのはそれだけではなかった。


目の前で倒れているその人は、なんと磐波さんだったのだ。


「い、磐波さん……っ!」


慌てて駆け寄って彼の体を揺すってみるものの、意識がないのか反応がない。


いったい誰が磐波さんを刺したんだろう。


どうすることもできずにオロオロすることしかできない。


と、そのとき。


うしろから枯れ葉がこすれ合うような音が小さく聞こえてきて、近くなるにつれてその音がだんだん大きくなってきた。
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