誰も知らない彼女

☆☆☆

帰り道。


家の方向が違う若葉と別れ、私は家まで歩いて帰ることにした。


だけど、レストランから家までの道に目立った街灯がなかったため、心配した磐波さんが家まで送ってくれると言って、彼と一緒に帰ることになった。


家までだいたい30分くらいだからあっという間だろうと思ったが、その時間が長く感じる。


夜の道が怖いからゆっくり歩いているせいもあるかもしれないけど、磐波さんがさっきからずっと黙っているせいもあると思う。


レストランでの磐波さんの怖い表情が脳裏にこびりついて離れない。


そう思った直後、先を行く磐波さんが振り返って左手を差しだしてきた。


なんの意味があって差しだしたのかわからずに首をかしげる。


夜の闇のせいで磐波さんの顔はよく見えないけど、まだ怒っていると思う。


どうしようかと迷っていると、右手がなにかに掴まれる感覚を覚える。


「手、つないでおかないと危ないから」


それだけ言うと磐波さんはまたスタスタと歩きはじめた。


「…………!」


磐波さん、足速い! 足が速すぎる! ついていかないよ!
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