誰も知らない彼女
心の中に思っている言葉を閉じ込めて、首をかしげる。


視界に姿が映った十数秒後、やっとでネネが私たちのもとにたどり着いた。


「はぁ……っ、はぁ……っ」


ネネは走るのがあまり得意ではないためか、すぐに苦しそうな顔をする。


私と周りの子たちはネネが呼吸を整えるのを待つことにした。


しばらくしてネネが口を開けた。


だけどまだ少し息が詰まっているようで、苦しそうだ。


「あ、あのさ……抹里ちゃんの……机の中に……」


なんとか言葉を出したあと、握っていた手をゆっくりと開けた。


そこにはノートの切れ端のようなものがあった。


これ、いったいなんだろう。


「え……もしかしてそれ、榎本さんの机の中に入ってたの……?」


囲んでいる子たちのひとりが顔を青ざめながら目を見開いた。


淡々とうなずくネネ。


私も驚きを隠せなくなる。


なんでそんなものが私の机の中に入ってたの?


ネネたちもきっと同じ疑問を抱いているかもしれないけど、一番気になっているのは私だ。


だって、心の中で思っていたことが言葉になって出ていたんだもん。
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