誰も知らない彼女
さすがに嘔吐物を再び視界に映すことができなくて、目を背けて教室を出た。


そのときに無意識に教科書や筆記用具などが入ったカバンを持ってきていたので、このまま帰ることにするか。


なんかクラスにいづらいし。


若葉が二度目に吐いたものを目にした瞬間に私も吐きそうになったから、それでクラスの笑われ者にされてしまうかもしれないと思ったのだ。


もちろん助けたい気持ちがないわけではない。


だけど、若葉と同じふうに嫌がらせを受けるのは嫌だと体が拒否している。


正直もうこの学校から逃げてしまいたい。


この世界から消えてしまいたいとさえ思っている。


私のようなダメ人間は必要ないよね。


そう思いながら廊下を歩いていると、向こう側から見覚えのある人物が視界に映った。


背の高い、モデルのような体型の男の人。


磐波さんだ。


視力はいいほうだから間違いない。


でも、どうしてこの学校に通ってないはずの磐波さんがここにいるんだろう。


疑問を抱きつつも知らないフリをする。
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