誰も知らない彼女
暴走
若葉への嫌がらせが続いてはや数週間。
由良と秋帆たちも飽きてやめるのかなと思いきや、さらに嫌がらせがエスカレートしていった。
その間にも彼女を助けようと、彼女を誰もいないところに連れていってなぐさめようとするが、なかなかうまくいかなかった。
若葉に話しかけた瞬間に誰かが来て彼女を蹴ったり、若葉が私に泣きつくばかりで全然話が進まなかったり。
『榎本さん……私、どうすればいいの? 私は本当のことを話してるだけなのに、誰も信じてくれないのよ……。ねぇ、どうすれば誤解だってわかってくれるの……?』
私の腕をギュッと強く握りながら私にしがみついた若葉の言葉が不意によみがえった。
嫌がらせを受けるのが当たり前になっているせいか、最近の若葉はちょっと怖い。
ひとりでクスクスと笑ったかと思ったら急に泣きだしたり、突然怒ったかと思ったら不気味に笑いはじめたり。
そんな若葉が今一番怖い。
だけど若葉の豹変ぶりなど気にもとめず、加害者たちは肉体的にも精神的にも若葉を痛めつけた。
『なに笑ってんだよ! 気持ちわりぃんだよ!』
『お前がいるだけで不愉快なんだけど〜』
『その身なり、どうにかしてくれない?』
『ウゼェなぁ。頼むから学校に来んなよ』