誰も知らない彼女
そのときの自分を叱りたい気分だけど、そんなに怒ることでもないような気さえしてしまう。


たったひとりのクラスメイトを助けられなかっただけでなんだと思うクラスメイトたちに流されたのかもしれない。


その思いが強くなるきっかけがやってきた。


この日の4限は体育で、女子だけ体育館でバスケットボールをすることになっていた。


私たちのクラスだけでなく、隣のクラスとの合同授業だった。


「昼ご飯の前に体育って、なんか嫌だな」


「だよねー。なんか参加したくない気分だけどー」


そんなことを言いながら体育館へと入ってくるクラスメイトたち。


私は由良たちと一緒に体操着に着替え、授業がはじまる5分前には体育館に来ていた。


はぁ……なんか気が重いな。


ひとりで前屈をしながらそう考えていると、秋帆の声が耳に響いてきた。


「ねぇ。今日、朝丘って来てたっけ?」


ドキッ。


びっくりした……。


秋帆が突然若葉の名前を出すものだから、体が一瞬だけ震えた。


「えっ、どうだろ。わかんない」


疑問を抱いてるとは思えないような由良の声が通り抜けてしまうくらい、秋帆の言葉に疑問を覚えた。
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