あなたしか見えないわけじゃない
真っ直ぐに
島に戻ってすぐに診療所の後藤先生のお宅に行った。
契約更新しないことを伝えるためだ。
「そうだと思ったよ」と後藤先生は笑った。
「池田先生よかったわね。喜んだでしょ?」
後藤先生の奥さんも笑顔だ。
更新しないと言っただけだけど、どうして池田先生って洋ちゃんの名前が?
そこにどこからか白猫ソルトもやって来て私の匂いをしつこい程嗅いで回っている。
「ソルトったら。そんなに私汗臭いかな」
膝に乗って立ち上がってふんふんと鼻を鳴らして私の首すじや胸元の匂いを嗅いでいる。
「ソルト、しつこいよぉ」
後藤先生と奥さんはにやにやして私を見ている。
「しおちゃんから池田先生の匂いがするのよ。ねー、ソルト」
えっ?!
私は真っ赤になった。
お二人には休暇を取って横浜に行くと言っただけで、洋ちゃんに会うような話はしていないんだけど。
やだ!恥ずかしい。
「で、どうなってるの?結婚するの?」
奥さんが直球で聞いてきた。
「え、ええっと、何だかそんな流れになる……らしいです」
と小声で言うと
「わぁー!池田先生やったわね。お祝いのメールしなくちゃだわ。池田先生よかったわ。おめでとうのメール、メール」
と奥さんは興奮状態になった。
ん?
私におめでとうではなく洋ちゃんになの?
後藤先生は「そうか、やったか。よかった、よかった」と繰り返しているし。
「ああ!役場の林さんに連絡しなくちゃ」
奥さんはバタバタとスマートフォンを取り出すと林さんに電話をかけている。
「あ、林さーん、池田先生がとうとうしおちゃん射止めたって。うん、うん。そーなのよー!」
その時、後藤先生の携帯電話が鳴った。
「お、池田先生だ」
洋ちゃん?
「はいはい。うん、うん。そうか。よかったな。おめでとう。いや、こっちはいいよ」
後藤先生は洋ちゃんと、奥さんは林さんと電話していて私は放置されていた。
あ、ソルトが私の腕に頬をすり寄せてかまってくれているけど。
「ね、ソルト。そんなに洋ちゃんの匂いがするの?」
ソルトは「にゃああん」とひと鳴きして私の膝で丸くなる。
「ねぇ、しおちゃん。ソルトってなぜソルトって名前が付いたのか知ってる?」
電話を切った奥さんがやっと私に声をかけてきた。
ん?名前の由来?
「海水とか島の海とか白猫だし白い塩のイメージですか?」
「ちょっと違うかな。じゃ、誰が名前を付けたのか知ってる?」
「え?奥さんじゃないんですか?」
飼い主なんだし。
「違うのよねー。名前を付けたのは池田先生よ」
「へぇ。知らなかったです」
「でね、名前の由来……私は、志織だと思うのよね」
はい?私?
「志織、しお、塩、ソルト」
「何だか無理やりに聞こえますけど?」
真面目に言う奥さんに苦笑する。
「でも、池田先生が『大切な子に似てる』って言ってたのよ。しかも、その後連れて来た子を見て確信したわ。絶対、池田先生の『大切な子』はしおちゃんよ。本当にソルトみたいだったんだもの」
私がネコに似ているとか、洋ちゃんが『大切な子がいる』って言ったこととかに私があ然としていると奥さんは
「ね、あなた、そうよね」と後藤先生に同意を求めていた。
契約更新しないことを伝えるためだ。
「そうだと思ったよ」と後藤先生は笑った。
「池田先生よかったわね。喜んだでしょ?」
後藤先生の奥さんも笑顔だ。
更新しないと言っただけだけど、どうして池田先生って洋ちゃんの名前が?
そこにどこからか白猫ソルトもやって来て私の匂いをしつこい程嗅いで回っている。
「ソルトったら。そんなに私汗臭いかな」
膝に乗って立ち上がってふんふんと鼻を鳴らして私の首すじや胸元の匂いを嗅いでいる。
「ソルト、しつこいよぉ」
後藤先生と奥さんはにやにやして私を見ている。
「しおちゃんから池田先生の匂いがするのよ。ねー、ソルト」
えっ?!
私は真っ赤になった。
お二人には休暇を取って横浜に行くと言っただけで、洋ちゃんに会うような話はしていないんだけど。
やだ!恥ずかしい。
「で、どうなってるの?結婚するの?」
奥さんが直球で聞いてきた。
「え、ええっと、何だかそんな流れになる……らしいです」
と小声で言うと
「わぁー!池田先生やったわね。お祝いのメールしなくちゃだわ。池田先生よかったわ。おめでとうのメール、メール」
と奥さんは興奮状態になった。
ん?
私におめでとうではなく洋ちゃんになの?
後藤先生は「そうか、やったか。よかった、よかった」と繰り返しているし。
「ああ!役場の林さんに連絡しなくちゃ」
奥さんはバタバタとスマートフォンを取り出すと林さんに電話をかけている。
「あ、林さーん、池田先生がとうとうしおちゃん射止めたって。うん、うん。そーなのよー!」
その時、後藤先生の携帯電話が鳴った。
「お、池田先生だ」
洋ちゃん?
「はいはい。うん、うん。そうか。よかったな。おめでとう。いや、こっちはいいよ」
後藤先生は洋ちゃんと、奥さんは林さんと電話していて私は放置されていた。
あ、ソルトが私の腕に頬をすり寄せてかまってくれているけど。
「ね、ソルト。そんなに洋ちゃんの匂いがするの?」
ソルトは「にゃああん」とひと鳴きして私の膝で丸くなる。
「ねぇ、しおちゃん。ソルトってなぜソルトって名前が付いたのか知ってる?」
電話を切った奥さんがやっと私に声をかけてきた。
ん?名前の由来?
「海水とか島の海とか白猫だし白い塩のイメージですか?」
「ちょっと違うかな。じゃ、誰が名前を付けたのか知ってる?」
「え?奥さんじゃないんですか?」
飼い主なんだし。
「違うのよねー。名前を付けたのは池田先生よ」
「へぇ。知らなかったです」
「でね、名前の由来……私は、志織だと思うのよね」
はい?私?
「志織、しお、塩、ソルト」
「何だか無理やりに聞こえますけど?」
真面目に言う奥さんに苦笑する。
「でも、池田先生が『大切な子に似てる』って言ってたのよ。しかも、その後連れて来た子を見て確信したわ。絶対、池田先生の『大切な子』はしおちゃんよ。本当にソルトみたいだったんだもの」
私がネコに似ているとか、洋ちゃんが『大切な子がいる』って言ったこととかに私があ然としていると奥さんは
「ね、あなた、そうよね」と後藤先生に同意を求めていた。