あなたしか見えないわけじゃない
しばらくして木村さんから1枚のDVDが送られてきた。
『結婚おめでとう。2人で観てね』とメモが付いていた。
洋ちゃんの帰宅を待ってディスクをセットした。
「この間の演奏会のだよね。一生さん素敵だったからまた聴けて嬉しいな」
洋ちゃんの顔を見ると、私の目線をそらしたりしてなぜだか落ち着きがない。
どうしたのか聞いても苦笑するだけ。変なの。
リモコンの再生ボタンを押した。
一生さんの奏でるメロディーが流れるけど画面は暗い。
徐々に客席の一部だけ明るくなる。
ん?あれ、あの場所って。
2人の人影がシルエットとして映っている。顔はハッキリとわからない。
2人の手が重なり、片手が離れ指輪が見える。
やがて指輪は向かい合ったもう一人にはめられ、2人の影は重なった…。
「こ、これってあの時の」
マスコミが入っていたのは知ってるけど、まさか私たちまで撮影されていたとは。
「もしかして、洋ちゃん知ってた?どういうこと?」
「うーん。志織がまだ島にいる時に一生さんから連絡をもらったんだよ」
洋ちゃんも困惑顔をしている。
「木村さんが自分がけしかけるような事をしたせいで結果的に志織が香取先生から嫌がらせされて離島に行く事になってしまったってかなり気にしていたって。一生さんも心を痛めていたらしいんだ」
「そんなの、木村さんのせいじゃないのに」
「でも、彼女は気にしていた。それで『もし、ちゃんとしたプロポーズがまだなら応援させて欲しい』と一生さんに言われてね。
記念になるならそれもいいかと思ったんだよ。キチンとしてなかったし」
洋ちゃんはちょっと笑った。
「まさか、こんなにしっかり撮影されていたとは知らなかったけど」
あれ、まだ映像に続きがある。
『木村一生 New album』
タイトルが映る。そして、あの指輪をもらった後に弾いた曲が流れ始める。
映像が横浜の夜景になる。
そして一転して昼間の海辺に変わる。
青い空と海、白い砂。
その後、洋ちゃんのプロポーズシーンになる。
私たちの姿はシルエットだけで知り合いじゃなければ顔はわからないだろう。
洋ちゃんが私の涙を拭って、瞼にキスしたシーンはシルエットじゃなくてアップにされしっかりと映っていた。
でも、とてもきれいに映っている。
映画のワンシーンのようだ。さすがプロ。
これが一生さんの新曲のプロモーションビデオになるというのだ。
「ステキな仕上がりだね」
「そうだな」
あの日の感動を思い出してまた胸の奥が熱くなり、涙がこみ上げてきた。
「志織、泣くなよ」
洋ちゃんがいつものように優しく抱きしめて涙を拭ってくれる。
それが嬉しくて洋ちゃんの首すじにすりすりとしちゃう。
「志織、くすぐったいよ」
そう言っても洋ちゃんはイヤがってるわけじゃない。
首すじにチュッと軽くキスしてまたぎゅっと抱きつく。
洋ちゃんの呼ぶ「志織」って声が好き。
温かい胸と洋ちゃんの匂いが好き。
優しく撫でてくれる大きな手が好き。
見た目よりがっしりとした腕が好き。
洋ちゃんが全部大好き。
幸せだ。
「志織、眠いの?」
「ううん。幸せに浸ってたの」
「身体が温かいから眠いのかと思ったよ。昔から暖めてやると寝ちゃうから」
クスっと笑うからちょっと悔しくなる。
「もうそんなに子どもじゃないわよ」
耳元で囁いて耳たぶを軽く噛んだ。
「洋介」
途端に洋ちゃんの身体がビクッとして私は一瞬で洋ちゃんに仰向けにされてソファーに押し倒されていた。
「志織、それダメだって言ったよね」
そう言って噛みつくような熱くて深いキスをされた。
キスされる前にチラッと見えた洋ちゃんの顔は……ちょっと赤かった気がする……。
『結婚おめでとう。2人で観てね』とメモが付いていた。
洋ちゃんの帰宅を待ってディスクをセットした。
「この間の演奏会のだよね。一生さん素敵だったからまた聴けて嬉しいな」
洋ちゃんの顔を見ると、私の目線をそらしたりしてなぜだか落ち着きがない。
どうしたのか聞いても苦笑するだけ。変なの。
リモコンの再生ボタンを押した。
一生さんの奏でるメロディーが流れるけど画面は暗い。
徐々に客席の一部だけ明るくなる。
ん?あれ、あの場所って。
2人の人影がシルエットとして映っている。顔はハッキリとわからない。
2人の手が重なり、片手が離れ指輪が見える。
やがて指輪は向かい合ったもう一人にはめられ、2人の影は重なった…。
「こ、これってあの時の」
マスコミが入っていたのは知ってるけど、まさか私たちまで撮影されていたとは。
「もしかして、洋ちゃん知ってた?どういうこと?」
「うーん。志織がまだ島にいる時に一生さんから連絡をもらったんだよ」
洋ちゃんも困惑顔をしている。
「木村さんが自分がけしかけるような事をしたせいで結果的に志織が香取先生から嫌がらせされて離島に行く事になってしまったってかなり気にしていたって。一生さんも心を痛めていたらしいんだ」
「そんなの、木村さんのせいじゃないのに」
「でも、彼女は気にしていた。それで『もし、ちゃんとしたプロポーズがまだなら応援させて欲しい』と一生さんに言われてね。
記念になるならそれもいいかと思ったんだよ。キチンとしてなかったし」
洋ちゃんはちょっと笑った。
「まさか、こんなにしっかり撮影されていたとは知らなかったけど」
あれ、まだ映像に続きがある。
『木村一生 New album』
タイトルが映る。そして、あの指輪をもらった後に弾いた曲が流れ始める。
映像が横浜の夜景になる。
そして一転して昼間の海辺に変わる。
青い空と海、白い砂。
その後、洋ちゃんのプロポーズシーンになる。
私たちの姿はシルエットだけで知り合いじゃなければ顔はわからないだろう。
洋ちゃんが私の涙を拭って、瞼にキスしたシーンはシルエットじゃなくてアップにされしっかりと映っていた。
でも、とてもきれいに映っている。
映画のワンシーンのようだ。さすがプロ。
これが一生さんの新曲のプロモーションビデオになるというのだ。
「ステキな仕上がりだね」
「そうだな」
あの日の感動を思い出してまた胸の奥が熱くなり、涙がこみ上げてきた。
「志織、泣くなよ」
洋ちゃんがいつものように優しく抱きしめて涙を拭ってくれる。
それが嬉しくて洋ちゃんの首すじにすりすりとしちゃう。
「志織、くすぐったいよ」
そう言っても洋ちゃんはイヤがってるわけじゃない。
首すじにチュッと軽くキスしてまたぎゅっと抱きつく。
洋ちゃんの呼ぶ「志織」って声が好き。
温かい胸と洋ちゃんの匂いが好き。
優しく撫でてくれる大きな手が好き。
見た目よりがっしりとした腕が好き。
洋ちゃんが全部大好き。
幸せだ。
「志織、眠いの?」
「ううん。幸せに浸ってたの」
「身体が温かいから眠いのかと思ったよ。昔から暖めてやると寝ちゃうから」
クスっと笑うからちょっと悔しくなる。
「もうそんなに子どもじゃないわよ」
耳元で囁いて耳たぶを軽く噛んだ。
「洋介」
途端に洋ちゃんの身体がビクッとして私は一瞬で洋ちゃんに仰向けにされてソファーに押し倒されていた。
「志織、それダメだって言ったよね」
そう言って噛みつくような熱くて深いキスをされた。
キスされる前にチラッと見えた洋ちゃんの顔は……ちょっと赤かった気がする……。