あなたしか見えないわけじゃない
志織は一度決断すると行動が早い。
医療過疎地域で働きたいと言い出した時には焦った。
もうどこで働くかも決めてしまっている可能性があるから。
後藤先生の離島の診療所の話をすると、興味を示してくれたからかなりホッとした。
知らない場所に志織を行かせるのはイヤだった。
しかし、あの島にも結構独身の若者がいる。
ヤツらに志織を渡す気はない。
関係各所に連絡をとり、志織に悪い虫が付かないようにしなくては。
島に渡ると案の定、男たちが群がってきた。
しっかり牽制しておいたが、心配だから後藤先生や役場の林さんに更にお願いしておく。
1年の我慢だ。
1年もあの島にいれば志織も自信を取り戻すだろう。
志織が俺の隣で笑顔で過ごせるようになるのなら何でもしよう。
1年後、志織が島を離れる少し前に後藤先生の奥さんから俺に写真が添付されたメールが届いた。
志織と白ネコのソルト
島にいる間、ソルトと志織のイメージが重なってしまって困った。
そんな志織の写真を見て苦笑した。
やはり、奥さんにはバレバレだったのか。
早く帰っておいで。
もう逃がさないから。