あなたしか見えないわけじゃない


志織が島から戻る事が決まってすぐに、志織の先輩の木村さんに病棟で声をかけられた。
ピアニストの旦那さんが俺に会いたいという。

数日後に会って話すと2つの事を提案された。

1つはプロポーズの場を提供すること
もう1つはその際の映像をプロモーションビデオとして使用させて欲しいというものだった。

もちろん、使用前に映像は確認出来るらしいからOKをした。
ただでさえ自己評価が低い志織には女性としての自信を取り戻す良い機会だろう。
きれいな志織を見せびらかしたいという気持ちもあるし。


大切な志織のためなら何でもしてやる。



もうすぐだ。
もうすぐ志織が俺の腕の中に戻ってくる。
これからは絶対に離さない。
2人で楽しく穏やかに暮らして行こう。

早く帰っておいで。
俺の大切な白ネコ。






2年後


志織はオフィスビル内で開業医をしている俺の友人のところで働いている。志織はますますキレイになり、友人の医院の男性患者数を増やしていた。
ビル内で働くビジネスマンの心のオアシス的存在らしい。
仕事中は結婚指輪をしていないから、俺の心配は絶えない。

虫除けは志織の妊娠したお腹だった。
どうやら双子らしいのだ。
早いうちからふっくらと膨らんだお腹の志織を見て既婚者と気が付きがっかりする男たち。

俺の子供は胎児のうちからいい仕事をしてくれる。
思わず笑みがこぼれる。

志織は普段は『洋ちゃん』と呼ぶくせにここ一番って時だけ呼び方を変える。
そして俺は今日も『洋介』と耳元で囁く志織にやられてしまうんだ。

志織、今日も甘いキスをしよう。






*** 大切な白ネコ  終わり *****
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