あなたしか見えないわけじゃない
兄と姉
洋兄ちゃんの目論み通り、私はテレビ番組に夢中になっていた。
番組が終わる頃にはもう深夜になっていた。
「さぁ、眠れるかい?」
眠れる気はしないけど、洋兄ちゃんは明日も仕事だ。寝かせてあげなくちゃ。
「別々の部屋と同じ部屋に布団を敷くのはどっちがいい?」
「……同じ部屋」
洋兄ちゃんの事が好きな人、洋兄ちゃんの将来の奥さんごめんなさい。今夜は洋兄ちゃんを私に貸して下さい。どうにも今は1人が辛いんですと心の中で謝る。
洋兄ちゃんのベッドの隣に客用布団を敷く。
私がベッドを使うように言われて素直に潜り込む。
洋兄ちゃんの匂いがする。小さな頃よく一緒に眠ったな。
でも、目を閉じるのが怖い。どうしよう。
ベッドで寝返りをしていると、洋兄ちゃんが起き上がってベッドに腰掛けた。
「志織、眠れない?」
「うん。目を閉じるのが怖いの。イヤなイメージが浮かんできそう。吐き気も過呼吸もいやなの」
「そうか、わかった。……志織、俺の言うことを聞いて。俺を信じて目を閉じてごらん」
そう言うと私の耳元の髪を優しくかき上げた。
「え、目を閉じるの?」
「そう。大丈夫だから。ちょっとだけ閉じてみて」
怖い、けど洋兄ちゃんが撫でてくれている頬や髪は優しく温かい。気持ちが安定する。
「うん」目をゆっくり閉じた途端、私の鼻が温かいものに包まれ次にカプリとした痛みと共に離れる。次にチュッとリップ音がしてまた離れた。
ひっ。今のって。
「ぎゃー、洋兄ちゃんが食べた-!」
洋兄ちゃんが私の鼻に噛みついてキスをした。
ははって笑う洋兄ちゃんの背中をバシバシと叩く。
「食べた-!食べたっ!」
「志織、食べてない。ちょっと噛みついただけだから」
ぎゃーぎゃー騒ぐ私を笑いながらなだめる。
鼻のアタマがヒリヒリして痛い。
「ほら、これでもう目を閉じた時に浮かぶイメージはイヤな事じゃなくて俺のキスになるから。安心して目を閉じられるよ」
「キスじゃないじゃん!噛みついたじゃん」
「へぇ-。じゃ志織は俺に大人のキスをして欲しい?」
イタズラっぽい瞳でニヤッとして私を見た。
え、あー、それはちょっと…どうだろう。
「……いらない」
「じゃ、これでよかったでしょ?」
叩くのをやめた私の頭を撫でて「もう大丈夫だよ」と言う。
洋兄ちゃん。
やっぱりすごいな。
「ありがと。何だか大丈夫な気がしてきた」
「そうか、よかった。辛くなったらいつでも起こしていいから。明日の朝も起きないでゆっくり寝てろよ」
そう言うと、洋兄ちゃんは布団に戻って行った。
温かい洋兄ちゃんが離れると、淋しくなった。
でも、さすがに一緒に寝てとは言えない。
小学生じゃないんだから。
どうしよう。
でも、今日だけ。今日だけ甘やかしてもらおう。
ベッドからそっと下りて、洋兄ちゃんの布団に潜り込む。
洋兄ちゃんの腕に両腕を絡ませて肩に顔をすり寄せしがみつく。
「志織、お休み」
洋兄ちゃんは私の額に軽くキスをした。
よかった、拒絶されなかった。
私は安心して目を閉じる。
脳裏に浮かんだイメージは、日なたぼっこしながらよく眠ってしまったおばあちゃんちの縁側だった。
ほかほかになった座布団を並べてに一緒寝転んでいるのは、中学生の洋兄ちゃん。
洋兄ちゃんの髪の毛は私より柔らかくてネコみたい。
ふわふわ…身体が温かくなり私は眠りに落ちた。
番組が終わる頃にはもう深夜になっていた。
「さぁ、眠れるかい?」
眠れる気はしないけど、洋兄ちゃんは明日も仕事だ。寝かせてあげなくちゃ。
「別々の部屋と同じ部屋に布団を敷くのはどっちがいい?」
「……同じ部屋」
洋兄ちゃんの事が好きな人、洋兄ちゃんの将来の奥さんごめんなさい。今夜は洋兄ちゃんを私に貸して下さい。どうにも今は1人が辛いんですと心の中で謝る。
洋兄ちゃんのベッドの隣に客用布団を敷く。
私がベッドを使うように言われて素直に潜り込む。
洋兄ちゃんの匂いがする。小さな頃よく一緒に眠ったな。
でも、目を閉じるのが怖い。どうしよう。
ベッドで寝返りをしていると、洋兄ちゃんが起き上がってベッドに腰掛けた。
「志織、眠れない?」
「うん。目を閉じるのが怖いの。イヤなイメージが浮かんできそう。吐き気も過呼吸もいやなの」
「そうか、わかった。……志織、俺の言うことを聞いて。俺を信じて目を閉じてごらん」
そう言うと私の耳元の髪を優しくかき上げた。
「え、目を閉じるの?」
「そう。大丈夫だから。ちょっとだけ閉じてみて」
怖い、けど洋兄ちゃんが撫でてくれている頬や髪は優しく温かい。気持ちが安定する。
「うん」目をゆっくり閉じた途端、私の鼻が温かいものに包まれ次にカプリとした痛みと共に離れる。次にチュッとリップ音がしてまた離れた。
ひっ。今のって。
「ぎゃー、洋兄ちゃんが食べた-!」
洋兄ちゃんが私の鼻に噛みついてキスをした。
ははって笑う洋兄ちゃんの背中をバシバシと叩く。
「食べた-!食べたっ!」
「志織、食べてない。ちょっと噛みついただけだから」
ぎゃーぎゃー騒ぐ私を笑いながらなだめる。
鼻のアタマがヒリヒリして痛い。
「ほら、これでもう目を閉じた時に浮かぶイメージはイヤな事じゃなくて俺のキスになるから。安心して目を閉じられるよ」
「キスじゃないじゃん!噛みついたじゃん」
「へぇ-。じゃ志織は俺に大人のキスをして欲しい?」
イタズラっぽい瞳でニヤッとして私を見た。
え、あー、それはちょっと…どうだろう。
「……いらない」
「じゃ、これでよかったでしょ?」
叩くのをやめた私の頭を撫でて「もう大丈夫だよ」と言う。
洋兄ちゃん。
やっぱりすごいな。
「ありがと。何だか大丈夫な気がしてきた」
「そうか、よかった。辛くなったらいつでも起こしていいから。明日の朝も起きないでゆっくり寝てろよ」
そう言うと、洋兄ちゃんは布団に戻って行った。
温かい洋兄ちゃんが離れると、淋しくなった。
でも、さすがに一緒に寝てとは言えない。
小学生じゃないんだから。
どうしよう。
でも、今日だけ。今日だけ甘やかしてもらおう。
ベッドからそっと下りて、洋兄ちゃんの布団に潜り込む。
洋兄ちゃんの腕に両腕を絡ませて肩に顔をすり寄せしがみつく。
「志織、お休み」
洋兄ちゃんは私の額に軽くキスをした。
よかった、拒絶されなかった。
私は安心して目を閉じる。
脳裏に浮かんだイメージは、日なたぼっこしながらよく眠ってしまったおばあちゃんちの縁側だった。
ほかほかになった座布団を並べてに一緒寝転んでいるのは、中学生の洋兄ちゃん。
洋兄ちゃんの髪の毛は私より柔らかくてネコみたい。
ふわふわ…身体が温かくなり私は眠りに落ちた。