あずゆづ。
あの日の昼休み。
メガネ女と二人でいて、唐突に悠太にあいつが連れて行かれた時
……めちゃくちゃ探した。
てっきり校内のどこかにいるかと思ってたけど、どこ探してもいなくて。
無意識に焦っていた自分がいた。
必死になって探した。
校内にいないとわかって、今度は外を探した。
そうやってやっと見つけたとき。
あの野郎、メガネ女にキスなんかしようとしてて。
そのことに気づいた瞬間、とっさにあいつの腕をつかんで自分の元に引き戻してた。
そんで、よくわかんねえまま、抱きしめてた。
「…くそ……っ」
離したくない、渡したくない。
そう思ってたのは、俺だけだったんか。
「あークソックソッ!!
あのメガネ女ぁ!!」
なんでだ!!
なんであんな奴のことでこの俺がこんなに頭の中ごちゃごちゃになんなきゃいけねんだ!!!
うぜえっ!
なんだこのモヤモヤは!!
「ゆづー、イライラすんのはあんたの勝手だけど、お客さん増えてきたんだから早く支度してよねー」
更衣室の向こう側から、姉貴の急かす声が聞こえてくる。
「……チッ」
用意されていたそれに袖を通し、慣れた手つきで背中側のリボンを結んだ。
何度着ても、着慣れない仕事(メイド)服。
「くっそ……」
……あいつ、言いふらしたりしてねえだろうな……。