あずゆづ。

「いらっしゃいませ~」


俺の代わりに、バイトの女が声をかけに行った。

見た目は衣装や化粧などでいくらでもごまかせても、声だけはどうしようもない。


だからなるべく、声は出さないように俺も周りも配慮している。


「何名様でしょうか?」

「えーっと、8人なんですけど……入りますか?」

「!?」


す……っげえ、今一番聞きたくねえ声が聞こえた。

だから思わずその8名様の方を見た。


「……っ」


黒髪、黒い瞳。

学年で知らない奴はいないんじゃないかというくらい、主に女子からキャーキャー言われてる大人気の王子様……悠太。



そして、その隣にいる女としっかり目が合ってしまった。

その瞬間、俺は女装していることも忘れていつもの如くギロりと睨んだ。


そこにいたのは、今、俺をイライラさせている張本人。






で!!

悠太の隣にテメエがいるんだよ!!!!



「あ………」



メガネ女!!!!!!



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