あずゆづ。

「なああの子可愛くね?」

「どれ?」

「メガネの三つ編みの子―」

「!?」


さっきの野郎どもが店を出たのを確認し、またホールへ戻ろうとした時、またもやそんな会話が聞こえてきた。

声のする方を見ると、また別の野郎たちがこそこそと話していた。

メガネ…三つ編み……。

思い当たるところがいくつかあり、まさかと思いそいつらの視線を追うと。


「なんか泣いてるっぽいぜ?」

「あの隣の黒髪の男、彼氏か?」

「なかなかイケメン捕まえてんなあ」


「………!!」


その会話が、余計に俺を苛立たせて

我慢できずに

野郎たちの視線と、メガネ女との間に持っていたお盆を向ける。


「!?」

「なんだ?」


俺が持っていたお盆で視界を遮られた野郎たちが、不思議そうに俺を見る。


「……お会計どうぞ」


俺は、そいつらにそう言って、本日2回目の懇親の笑顔を向けた。


まったく、マジで俺は何をやってんだ……くそおっ!!!



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