あずゆづ。
*梓side*


「大丈夫? 梓ちゃん」


お手洗から戻ってきたゆうちゃんは、何も言わずにただ涙を流している私に向かって声をかけてきた。

でも私は、そんなゆうちゃんに何も言うことができず、次々と溢れてくる涙を止めることができなかった。


ゆづくん。

ゆづくん。


お水を取りに行ったとき、ゆうちゃんはその前にお手洗いに行くって言っていなくなって。

1人でお水をくもうとしていたとき。

知らない男の人2人に突然声をかけられて。

どうしたらいいかわからなくて。


ふと思わず、ゆづくんを見てしまった。


みんなに内緒で、女の人の格好をしてここでお姉さんのお手伝いをしてるゆづくん。

ばれちゃいけないから、なるべくゆづくんを見ないようにしなくちゃって、意識してたはずなのに。


今さら、ゆづくんの方を見たところで……

もう私、嫌われちゃったんだし。

きっとすぐに目をそらされて、無視されて終わりだって、目が合ってから後悔した。


……だけど。



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