あずゆづ。

「ゆづくん……?」

「……なんで、秋に……呼ばせてんだよ」

「へ?」


呼ばせる?

なにを……???


「え、えっと……それは、どういう……?」


ゆづくんったら、いつもこうやって主語がないから。

唐突にこんなふうに言われたって、わかるわけないじゃん。


それでも一生懸命考え、頭の上にはてなマークを浮かべる私に、

いらっとした様子のゆづくんが続けた。


「なんで俺より先に、秋がお前の名前呼んでんだ!!」

「えええ!!?」


呼ばせてるって、私のお名前のことだったのですね!?


というか、そんなこと私に言われても~……

だいたい岡本さんが勝手に呼んでたのに……。


しかし、そこまで思って、私はあることに気づいた。


「じゃ、じゃあ…」


きゅっと、ゆづくんのワイシャツの袖を引っ張る。



「……ゆづくんも私のこと、名前で呼んで?」



そういえば、今までずっと『メガネ』って呼ばれていた。

ましてや名前で呼ばれたことなんて、考えてみれば一度もない。



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