あずゆづ。

「お前はいつもそうだ」

「……え?」

「自分だけいっぱいいっぱいになって、自分だけ突っ走って、自分だけ解決したみたいにすっきりしやがって」


ゆ、ゆづくん。

私のこと、そんなふうに思ってたんだ。


「どんだけ、人のこと振り回したら気が済むんだよ、てめーは」

「わ、私振り回してなんか……!!」

反論しようとしていたとき。

ゆづくんは、着ていたワイシャツをバッと脱いで、あろうことかタンクトップ姿になってしまった。


「ふぶ……っ!?」


突然現れたパーフェクトマッスルに、思わず鼻血を噴射してしまいそうになるのを必死でこらえる。


「お前は、俺に『一目惚れした』って言った。でもそれは、俺自身のことじゃなくて……!!」

「……っ」


昨日の事みたいに鮮明に覚えてる。

私がゆづくんに連れられた、屋上でのことを言ってるんだよね、ゆづくん。


「挙句、『傍を離れません』なんて……あんな言い方されたら、誰だって勘違うに決まってんだろ、バカかバカなのか!?」

「そっ、それは、ゆづくんが『俺の傍を離れるな』なんて言うから……!!」

「ああ!? あれはてめぇ1人放っておくと人の秘密うっかりバラす危険性があったんだよ!! それくらい分かれよ!!」


「…………」

「…………」


私たち、お互いに勘違いしてたってこと……?

今まで、お互いの言葉の意味を、ちゃんと理解してなかったんだ。


「………っとに」

「……」


ゆづくんが、優しく私の頭を撫でてくる。


「……お前は、『とんでもねえバカな奴』だよ」

「………それって……!!」

「ほら見ろ」

「………」


ゆづくんが、ふっと笑う。


「やっぱ、伝わってねえじゃねーか」


優しく、大切なものを見るように優しく笑うから。

私も、目の前にいるこの人のことが、大切に思えて仕方なくなって。











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