あずゆづ。
私が今『描きたいもの』とは。
「ううう、」
細身だけど、それでいて適度についた美しい筋肉……
世の人の言う、細マッチョ。
綺麗に描けるようになりたいな。
私が漫画を描いてコンテストに応募したときに、『そんな子供のラクガキで賞なんかとれるわけないでしょ』とお母さんにさらっと言われたことがある。
そのことが未だに心に刺さっていたりすることもあって、以来人の体の部位をよく描くようになったのですが……。
「んんん……」
白いスケッチブックを滑るシャープペンは、いつの間にか止まっていた。
まあ、こうして筋肉を描いて、描き続けて、うまく描けるようになったとしてもきっと漫画を描くことは無いんだろうなあ。
シャープペンを人差し指と中指でくるくるとまわしながら、空を見上げたときだった。
「ゆづ~、もうすぐ昼休み終わるから教室戻ろうぜ~!!」
「!」
遠くから、男子の声が聞こえた。
「っせーよ指図してんじゃねえ!!」
「びゃ!!」
ものすごく怖い声が聞こえて、思わず木の陰に隠れる私。
そっと、声のした方を覗けば。