あずゆづ。
うさぎの小屋
それから私は
休み時間になるごとにゆづくんの筋肉ストーカーを続けた。
ひとつ変わったことは、いつ鼻血が出ても良いように箱ティッシュは常に持ち歩くようになった。
高い方のティッシュなので鼻も痛くならない。
もともと地味で影も薄かったけど、今までよりいっそう気配を消して歩くのが得意になったと我ながら思う。
果たしてゆづくんが気づいているかどうか。
まあこんなに完璧に気配を消してるんだから、気づかれるなんてことはまずないだろうけども。
そんな感じで、来る日も来る日もゆづくんの筋肉を追いかけているのだが。
「う~~~~~ん……」
放課後。
私はいつもの、大きな木の下にいた。
一日の休み時間をゆづくんに費やしたあと、放課後になるといつもここへ来てスケッチブックを開く。
そして、目を閉じてゆづくんのあのパーフェクトマッスルを思い出しては、シャープペンを走らせるのだが。
筋肉は描くことができている。
けれど何度スケッチブックに描いても、どうしてもゆづくんのあのパーフェクトマッスルにはほど遠かった。
どうして、こんなに見てるのに。
私の描く筋肉はあれに近づけないんだろうか。
何が違うんだろう、どこが違うんだろうと、自分の描き上げた筋肉と記憶を頭の中で重ね合わせる。
「この辺はもっと…こう盛り上がってて……ああ、背中の筋肉の情報が圧倒的に少ない…」
考えてみればタンクトップは筋肉の露出があって大変よろしいアイテムだけれど、背中とかお腹の筋肉はいずれにせよ拝むことが出来ないのだ。
僧帽筋……見たい…
「はっ!」
だらだらと垂れるよだれに気づくのが早かったおかげで、スケッチブックに自分のよだれが垂れずにすんだ。
すぐさまティッシュでぐいぐいと拭き取る。
いやあ、困りました。
私、本格的に……
……やばい奴になってる。