あずゆづ。
慌ててスケッチブックを閉じたゆづくんは、その鬼の形相で今度はこちらを見てくる。
「どういうつもりだ!! なんでテメエみてえなメガネ女が俺を…!!」
唐突に大きな声が私に襲いかかり、私は身を守るように両手で自分の頭をおさえて下を向いた。
「ちちち違いますううう……正確には『ゆづくんの筋肉』ですううう……どうか命だけは……!!」
「あああ!?」
「ひっ」
墓穴掘ってどうするよ私い…!!
「てめ……、このこと他の奴にばらしたら殺すぞ!!」
しかし、私のイラストに関してではなく、すぐさま自分のことについて話題を戻しながら、荒くスケッチブックを私に差し出してくるゆづくん。
相変わらずの鬼の形相だ。
しかし、『ゆづくんがメイド姿をしている』……そんなことよりも大切な事が私にはあるのです!!
「ゆ、ゆづくんこそ私の秘密……誰にも言わないでよ!?」
スケッチブックをゆづくんから奪うように取り返し、ぎゅうっと抱きしめながらゆづくんへと言い返す。
「『ゆづくん』だあ!? てめえにそんな呼び方される覚えはねえメガネ女!!」
「メガ…っ!?」
またメガネ女って言われた…!!
っていうか話を聞いて下さいゆづくん!!!(呼び方は変えない)
―――こうして私たちは。
理由はお互いにまだわからないけれど。
『どういうわけかメイド服を着て喫茶店の店員をしている』ゆづくん
『どういうわけかゆづくんの筋肉のスケッチをしている』私
お互いの秘密を知ってしまったわけでありました。
……って、これからどうなっちゃうの!!?