あずゆづ。

慌ててスケッチブックを閉じたゆづくんは、その鬼の形相で今度はこちらを見てくる。


「どういうつもりだ!! なんでテメエみてえなメガネ女が俺を…!!」


唐突に大きな声が私に襲いかかり、私は身を守るように両手で自分の頭をおさえて下を向いた。


「ちちち違いますううう……正確には『ゆづくんの筋肉』ですううう……どうか命だけは……!!」

「あああ!?」

「ひっ」


墓穴掘ってどうするよ私い…!!


「てめ……、このこと他の奴にばらしたら殺すぞ!!」


しかし、私のイラストに関してではなく、すぐさま自分のことについて話題を戻しながら、荒くスケッチブックを私に差し出してくるゆづくん。

相変わらずの鬼の形相だ。


しかし、『ゆづくんがメイド姿をしている』……そんなことよりも大切な事が私にはあるのです!!


「ゆ、ゆづくんこそ私の秘密……誰にも言わないでよ!?」


スケッチブックをゆづくんから奪うように取り返し、ぎゅうっと抱きしめながらゆづくんへと言い返す。


「『ゆづくん』だあ!? てめえにそんな呼び方される覚えはねえメガネ女!!」

「メガ…っ!?」



またメガネ女って言われた…!!

っていうか話を聞いて下さいゆづくん!!!(呼び方は変えない)




―――こうして私たちは。


理由はお互いにまだわからないけれど。



『どういうわけかメイド服を着て喫茶店の店員をしている』ゆづくん


『どういうわけかゆづくんの筋肉のスケッチをしている』私



お互いの秘密を知ってしまったわけでありました。


……って、これからどうなっちゃうの!!?


< 41 / 204 >

この作品をシェア

pagetop