あずゆづ。
「な、なんでクラスの王子様があずを…!?」
「いや、そこ私わかんない。っていうか私も信じられない」
「で?返事は?」
「まだ」
ただでさえくりくりと大きなひよりの目が、さっきよりも、いっそう大きくなる。
「付き合わないの?」
「いや、だって私なんかがゆうちゃんみたいな完璧人間と付き合う資格なんて…しかも黒の王子だし……」
それに、好きかどうかもはっきりしないあやふやな状態で付き合ったとしても
それはそれでゆうちゃんに悪い気がする。
だからって私ごときが黒の王子の告白を断っても良いものか……
そこまで考えて唐突に、もうひとつの事実を思い出してひよりに伝える。
「あ、あとね、今日から休み時間も放課後も、全部ゆづくんと過ごすことになってるから……」
「はああ!?」
う。
ひより、声おっきい。
耳痛い。
「なんで!? そこなんで!?」
これまた驚いたように……というかゆうちゃんの件よりも驚いたのか、信じられないのか、ひよりはまさかの私の胸ぐらを掴んでくるという行動にでた。
「いやあ、コレには海より深い、闇より深い理由がありまして…
大事なお友達であるひよりちゃんにも言えないんです…」
ひより越しに見える、鬼の形相が怖すぎて。
しゅんと肩をすぼませてそういえば、そんな私を見たひよりがまたひとつ、ふうとため息をつく。
「ふう……なんかめちゃくちゃ気になるけど、そこまで深いなら聞かないよ」
私の様子を見て、これは秘密にしないといけないことなのだろうと察してくれたのか
案外すんなりと了承してくれた。
ああ、ひよりが友達でよかった……。