あずゆづ。
「……行くぞ、メガネ女」
「あ、ハイ……」
くるりと踵をかえしたゆづくん。
そのおかげで、さっきまで見えていなかったゆうちゃんの姿が見えた。
少し、つらそうな、悲しそうな顔をしていたゆうちゃんと目が合う。
「……またね、梓ちゃん」
私に、またねと言ったあと、すぐにいつものふんわりとした王子スマイルになったゆうちゃん。
その笑顔に戻ったことで、少しほっとした自分がいた。
「う、うん…!」
そんなゆうちゃんに、この上なくぎこちない笑顔を浮かべて返事をした。
だって、どんな顔したらいいか分からなかった。
それでも笑わなきゃいけないような気がして、口角を上げた結果、こんなぎこちない笑顔になった。
ずんずんと歩みを進めるゆづくん。
ゆうちゃんとの距離がどんどん離れていく。
……少しして、ゆうちゃんはこちらに背中を向けて、歩いていってしまった。
それを確認した私は、大きくため息をついた。
「はぁぁあ~…………」
び、びっくりした………。
さっきのゆうちゃん、別人みたいだった。
少なくとも、あんなゆうちゃん私は知らない。
そして、どうしてだろう。
こうやってゆづくんと一緒にいるとほっとする自分がいた。
……安心してる自分がいた。
きゅっと、ゆづくんの制服を掴んで、目を閉じた。