あずゆづ。
***
ゆづくんは、私を担いだまま歩き続けた。
着いた先は、私とゆづくんがさっきまで穏やかに過ごしていた大きな木の下だった。
さっき2人が座っていた場所まで来て、足を止めたゆづくんは、ストンと優しく私を降ろしてくれた。
足には、さっきまで抜けていた力がすっかり戻っており、意外にもちゃんと立つことが出来ていた。
恐るべし、ゆづくんのパーフェクトマッスルパワー……。
「……てんめぇ………」
「……?」
気のせいか?
ゆづくんのバックからゴゴゴゴゴ……と怒りの音が聞こえるような……?
「は、ハイ……?」
返して!
さっきまでの私の安心を返して!!
これから怒鳴られそうな予感しかしなくて、その恐怖のあまり心の中で思わず叫んでいた、その時だった。
「簡っ単に! さらわれてんじゃねーよこのタコ!!」
「タコ!?」
新しい呼び名が誕生した瞬間!!
私は思わず口をタコのようにすぼめた!!
……時だった。
「…っお?」
さっきと同じように、ゆづくんに突然腕を引っ張られた。
そして私の体が行き着いた場所。
……そこは。
「ったく……」
「~…っ!!?」
ゆづくんの、腕の中。
すなわち、ギューを、されてしまっている。
ゆづくんに。
……もう一度言います。
ギューを、されています。
ゆづくんに、です。
「ま、まって、今状況把握を……」
開いた口を塞ぐかのように、ぎゅうっと私を抱きしめる力が強まる。
そのせいで、上手く声が出せなくなった。
「黙れ」
「……」
「離れんなっつったろ、カス」
「……かす……」