あずゆづ。
私を見て、機嫌悪そうに目を細めるゆづくん。
「意味わかんねェ」
ゆづくんはいつも、私より少し前を歩く。
並んでなんか歩かない。
それをわかってるから、私もそのままのペースで、ゆづくんより少し後ろを歩く。
おっきい背中が目の前にあるだけで、いつの間にかこんなに安心して
でもたぶん、他の人の背中じゃ、きっとこんなに安心しないんだろうな、なんて
「……へへ」
一緒にいると、なんだか嬉しくなっちゃって
「ゆづくん」
「あ?」
呼べばこうして振り返ってくれて
「なんでもない」
「ああ!? てめえぶっ殺すぞメガネ女ぁ!!」
こういうやりとりがすごく楽しくて。
「へへ、ごめん~…」
手を伸ばして、きゅっと、ゆづくんのワイシャツの袖をつかむ。
「っ!?」
驚いたように、ゆづくんが私を振り返った。