冬の日に



第一章.涙


12月24日の出来事だった。

「お前、何で泣い──」

「えっ・・・なっ何でもない!」

そう言って花音は教室から出ていった。

(花音、何で泣いてたんだ・・・?)

花音が泣いていた。笑顔の固まりのような、いつも笑っていた花音が。

何故だ?どうして、こんなに胸騒ぎがする?


────次の日

「ゆっっうたぁー!!学校行こ!」

花音はいつも通り、一緒に登校していて、昨日泣いていたことなんて、全く感じさせない。
俺は、聞いてみることにした。

「なぁ花音、昨日のことなんだけど──」

「あぁ!昨日の!ちょっと、泣けるテレビ思い出しちゃって!」

嘘だ。

「いゃぁー、思い出し泣きって奴!結構あるんだよねー!」

嘘だ。花音は嘘を付くのが下手だ。すぐに分かる。

「・・・・・何でそんな嘘をつくんだ?」
「え?」

花音の身体がビクッ と跳ねた。
「嘘ついて、なんの意味がある?」
「えっ・・・ちょっ悠太?」
完全に慌てている。

俺に頼って欲しい。
「俺を信じて。なんでも良いから、不安なことがあるなら、話せよ!」
すると、花音は黙り込んだ。そして、大声 で、叫んだ。
「っ・ ・・悠太に分かるわけないじゃん!!何も知らないくせに、何が『俺を信じて?』無駄だって!いいかげんにして!!」
初めて見た怒りながら走っていく君の姿は、夕日の中へと吸い込まれるように遠ざかって行った。




第一章.涙 END







第一章.2人の決心


花音は、学校に行ってから、明らかに、俺のことを避けるようになった。
だが、このまま引き下がるようなことはしない。

「なぁ花──」
「あっ!綾!おはよー」

・・・無視された。
「振っられってやっんの〜♪」
友達の圭が話しかけてきた。
「っるさい・・・圭は黙ってろ。」


キーンコーンカーンコーン

・・・きた。放課後。今日聞くチャンスは後、ここしかない。
「なぁ花音──」
「ねぇ悠太。今日一緒に駅前のクリスマスツリー、見に行かない?」

「・・・!?」
唐突な誘いに驚くが、もちろんOKだ。

「あぁ。行く。8時に、迎えにいくからな。」
その時、花音はいつもの笑顔より少し辛そうに見える笑顔をしていたことに俺は気づかなかった。
「分かった!」



────8時になった。
深呼吸して花音の家のインターホンを押す。
「迎えに来たよ。」
すぐに花音は出てくる。そして、
「じゃあ行こっか!」
と、いつもの笑顔を向ける。
「花音。なぁ・・・」


「ん?何?」

「・・・やっぱり何もない。」

「そっか・・・。」
花音は少し下を向いて歩いた。





第一章.2人の決心 END







第一章.悠太、バイバイ。

「わぁぁぁー!!すごいねぇー!!!」

駅までの道のイルミネーションを見ている。

「はいはい。綺麗だな。」

「も〜!冷たいなぁー。・・あ!着いたよー!」

綺麗なイルミネーションがしてあるクリスマスツリーの前に着いた。

「ということで!はい!悠太!プレゼント!」

そう言って渡されたのは、赤いマフラーだ。

「ありがと・・・でも俺、何も用意してない・・・」

もらったとしても、何も返せない。

「いーのいーの!・・・最後まで友達でいてくれてありがとう!」
俺は、その言葉の意味が分からなかった。
「え・・・それってどう言う──」
周りから悲鳴が上がった。
『キャーッ!!逃げて!!!』
『倒れてきてるぞ!』
上を見上げると、ツリーが倒れてきていた。
俺は同時に、後ろに押された。
すると、花音がその下に──



「バイバイ悠太。・・・大好きだよ。」



俺は、周りがうるさくて、聞き取れなかった。俺は目を見開いた。綺麗なツリーのイルミネーションが照らしている花音を見ながら俺は意識を手放した。






第一章.悠太、さようなら。END







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