運命は二人を
視線の先
【美也(みや)side】
『le plus bas homme!』(最低な男)
目を向けると、綺麗な女性が、目の前の男性にコップの水をぶっかけた所だった。
おそらくフランス人女性だろう。
そして、別れ話なのだろう。
その女性は、ヒールの音も高らかに、立ち去って行った。
ふと、強い視線を感じた。
まるで、私の身体ごと、蜘蛛の糸で絡め取られるような気がした。
水をかけられた日本人だろう男性が、私を見ていた。
まるで、《諦めろ、逃さない》と言う言葉まで、私の脳内に響いてくるようだった。
私は慌てて目をそらし、ピアノの上で止まったままだった指を動かし始めた。
ピアノの奏でる音で、再びレストランの中は、普段通りの時間を取り戻した。
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