運命は二人を
しかし、彼女は、一人ではなかった。
背の高い、端正な顔立ちの男性と、向かいあっている。
そして、彼が彼女の両方の頬に、軽くキスをした。
まるで、恋人同士の抱擁のように。
なんだ、彼がいたのか。
そうだよな、あんなにチャーミングなのだから、いないはずないだろうな。
二人の様子を見ながら、一人納得した。
やはり、そう言う運命なんだな。
俺は、そう自分に言い聞かせて、帰国の手続きを取った。
日本には、付き合い始めた彼女がいるのに、俺は一体何がしたかったのか。
笹本めぐみ、五才年下の彼女は、取り引き先の御令嬢だ。
粗末に扱うことは、出来ないのだ。
わかってはいる。
でも、自分で決めたことなのに、何故か心が全く動かない。