運命は二人を
再会は東京で
二ヶ月後、私は一年間の留学を終え、帰国した。
帰国と同時に、卒業コンサートに向けての準備と、合わせて、兄のリサイタルの手伝いもあり、毎日忙しくしていた。
おかげで、パリで会った彼のことは、すっかり頭の片隅に追いやられていた。
8月の末、兄のバイオリンのリサイタルが開催された。
笑顔で受付の手伝いをしていた私は、鋭い視線に思わず、顔が強張った。
パリでの視線よりも、更に強く感じたのは、何故だろう。
目の前に、パリで会った彼がいた。
声もなく、差し出されたチケットを切る。
彼は、綺麗な女性を同伴していた。
嬉しそうに、彼を見上げる彼女。
二人は、並んで、ホールの中に入っていく。
私は、心臓が、鷲づかみにされたような、痛みに見舞われた。
隣にいたスタッフが、支えてくれなければ、倒れていただろう。