運命は二人を
ここは、パリのゴールド・イン・ホテルの最上階レストラン《Perle de Paris 》だ。
そして、私、池上美也(いけがみ・みや)は、バイトでピアノを弾いている。
その男性は、『水も滴るいい男』と言う文字どおり、鼻筋の通ったイケメンだった。
ちらっとしか見ていないはずなのに、はっきりと顔を覚えてしまった。
しばらく、彼の視線を感じていたが、すうっと私の身体から絡められていた糸が流れて落ちていった。
と、同時に、その男性は、レストランを後にした。
後ろ姿は、背が高く、肩幅が広い。
もう、会うことも無い人。
しかし、あの視線の感触は、私の中で衝撃的であり、その後も幾度となく、思い起こすこととなる。