運命は二人を


私は、心の中で、『やめてよ、お母さん!』と叫んでいた。

雅さんは、

「それなら、うちの息子とどうかしら?音楽とは、無縁だけれど、奥さんの仕事には理解があると思うし、今度時間を作りましょうか?」

母もすかさず、乗り気で、

「いいわね。ぜひ、お願いしたいわ。息子さんとお会いしたことないから、私も会ってみたい。」

と、二人でどんどん話を進めていくではないか。

私は、言葉を挟むこともできず、ただただ、聞いているだけだった。

採寸が終わる頃には、お見合いの話が出来上がっていたのだ。

なんと母たちの世代のパワーには、勝てそうにない。私は、卒業コンサートの次の日、お見合いをすることになったのだった。
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