運命は二人を
ピアノを弾いていた私は、再び、あの視線を浴びることとなった。
ピアノの演奏を中断しそうになった。
しかし、かろうじて、スローテンポの曲だったため、さらにゆっくりと情感を込めて終わったかのように誤魔化すことができた。
私は、次の曲には入らず、ピアノの前から、視線のする方へ、目を向けた。
彼は、連れの男性と一緒に、窓際の席に案内される所だった。
しかし、視線は、私に向いている。
じっと私を見つめていたが、連れの男性に話しかけられて、私から視線を外した。
私は、『今しかない』と、咄嗟に感じ、楽屋へ急いだ。
あのまま、あそこにいたら、また、絡め取られて身動き出来なくなると、脳内の危険信号が教えていた。