運命は二人を
【和泉(いずみ)side】
俺は、どうしても彼女に会いたくて、再びパリに来ていた。
あの夜、今まで付き合っていたマリアンヌと、別れ話をしていた。
マリアンヌは、《Perle de Paris》での食事だから、特別な意味があると思ったらしく、別れを切り出したら、激怒し、俺に水をかけた。
その瞬間、俺は、目を離せない衝動にかられ、ピアノの前の彼女に釘付けにされたのだ。
そんな経験は、今まで皆無だ。
初めてのことに、戸惑い、その時はどうしてよいか考えられなかった。
日本に帰国してからも、彼女のことが頭から離れなかった。
たいした用事もないのに、再びパリに行く口実の仕事を作った。
会えるかどうかもわからないのに、今夜、《Perle de Paris》に来た。