運命は二人を


【和泉(いずみ)side】

俺は、どうしても彼女に会いたくて、再びパリに来ていた。


あの夜、今まで付き合っていたマリアンヌと、別れ話をしていた。

マリアンヌは、《Perle de Paris》での食事だから、特別な意味があると思ったらしく、別れを切り出したら、激怒し、俺に水をかけた。


その瞬間、俺は、目を離せない衝動にかられ、ピアノの前の彼女に釘付けにされたのだ。

そんな経験は、今まで皆無だ。

初めてのことに、戸惑い、その時はどうしてよいか考えられなかった。



日本に帰国してからも、彼女のことが頭から離れなかった。

たいした用事もないのに、再びパリに行く口実の仕事を作った。

会えるかどうかもわからないのに、今夜、《Perle de Paris》に来た。
< 5 / 86 >

この作品をシェア

pagetop