運命は二人を


同僚でもあり、高校からの親友でもある平孝太(たいら・こうた)と、オーダーをしている間に、彼女は、ピアノの前からいなくなった。

俺は、このまま、会えずじまいになるのは、避けたかった。

「今、ピアノを弾いていたのは、どなたですか?」

と、俺は思わずウエイターに聞いていた。


そんな俺を見て、孝太が、目を見開いて、唖然としている。

今まで俺が、自分から女性のことを知ろうとはしなかったからだろう。

ウエイターは、一呼吸おいてから、

「申し訳ありませんが、そういったご質問には、お答えすることはできません。 」

と、マニュアル通りの答えが、かえってきた。

まあ、当然だろうなあ。

すると、孝太は、

「彼女がどうかしたか?」

と、意味深な笑みを浮かべながら聞いてきた。



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